【午前の部】子どもが参加するインターネット 10:00〜12:00
●獨協大学教授 鳥谷部志乃惠氏
   NPOと地域社会 〜子どもの教育課題の解決に向けて〜
 地域で活動する市民の非営利の活動組織に法人格を与えて支援するNPO法の施行以来、法人格の取得に向けた活動が行われている。このような団体活動の増加は福祉、まちづくり、環境などの分野に多いが、近未来の地域社会の課題に全て対応できているわけではない。NPOの活動と組織運営の主体は大人たちであり、その活動を通じて行政などから社会的認知と活動の助成を受けている。地域社会の抱える問題解決には多くの市民活動団体が協働してかかわり合うことと、行政機関や民間企業などの協力も得て問題解決に当たることが必要な問題がある。その一つが情報化社会と子どもの教育の問題である。

 人間の発達と教育は文字言語の発展と共に歴史的に大きな変貌を遂げてきた。コンピューター・リテラシーの登場は人間の文化と社会の在り方を大きく変え、ひいては子どもの育ち方も変える要素を持っている。生身の身体は時間・空間の制約から逃れられないが、マルチメディアの世界は意識と感情を身体から連れ出して、あらゆる制約を超えていく自由な感覚とバーチャル・リアリティの世界の経験を齎す。誕生と共に与えられる身体の自然と操作性の能力として具体化する人間の知的な働きのギャップは、子どもたちの発達に大きな課題を投げかけることになるだろう。他者と交わることで自己を育ててきた仕組みはどんな形に変わるのか。間接経験が肥大化する中で、直に世界の事物と触れ合うことで生命としての身体的自己を学んできた仕組みは、不要のものとなったのか。人は一人称で語り始める頃からエゴイズムのエゴ(自我)が働き出すといわれる。道徳において古くから問題にされてきたエゴイズムに対する自覚を促す教育はどのようになるのか。生活の中で他者と出会う経験が弱体化し、自分一人でも生きられるような生活の仕組みが取り巻く中で、社会性や共同体の意味、他者の意味を学ぶ仕組みはどのような形をとらなければならないのか。

 このような問題意識のもとに、草加市における市民団体「みんなのまち・草の根ネットの会」の活動に参加して地域づくりの課題に取り組んできた経験から、若干の問題提起をしたい。


(1) 地域社会は、「生活者」としての異世代間交流の場として運営されることが必要である。単に地域の中に子どもの居場所を作るのではなく、子どもたちも生活者の一員として地域づくりに参画する為の新しい仕組みは何かを考えなければならない。

(2) 生活には常に解決すべき問題・課題がついて回る。子どもの生きる力を育てる為には実践的に課題解決の場面に立ち合わせていく仕組みが必要である。その為には問題解決に伴う民主的な合意形成の能力を育てる仕組みが必要である。この能力の育成につながるコミュニケーションの仕組みを考えなければならない。

(3) 生活の中には文化があり様々な価値が組み込まれてきた。子どもたちは価値と出会うことによって模倣から創造への飛躍をしていく。何を模倣するかどんな文化的価値に出会うかはコミュニケーションの質を決める条件である。匿名的な関わりだけでなく、互いの顔が見える独自性に富んだコミュニケーションを成立させる仕組みを考えなければならない。

鳥谷部 志乃惠 (とりやべ しのえ)1947年生まれ。静岡県出身。70年濁協大学外国語学部卒業 72年お茶の水女子大学大学院修士課程修了 78年東京教育大学大学院博士課程退学(教育哲学)96年から濁協大学外国語学部教授。現在、埼玉県青少年健全育成審議会委員、草加市社会教育委員、草加市女性問題協議会委員、草加市振興計画審議会委員。みんなのまち・草の根ネットの会企画委員として活動。
※今大会における参加者に配布したパンフレットです。↑

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