米国調査報告          
※ここに掲載した報告書はまだ未完成のものであり、実態とは違うものになっている場合もあります。転載等はご遠慮ください。尚、コメントは当事務局へいただけますよう、よろしくお願いいたします。

■Educational Resourcer Information Center<ERIC>
  Clearinghouse on Information&Technology 
                       (http://www.ericit.org
1 住所等
621 Skytop Road, Suit 160
Syracuse, New York 13244-5290
TEL: 800-464-9107
FAX: 315-443-5448
E-mail: eric@ericir.syr.edu
URL: http://www.ericit.org

2 調査日時
平成14年8月5日(月)14:00〜15:30

3 対応者
Eric Plotnick 氏(Associate Director)

4 ERICにおけるERIC/ITの位置付け
 ERIC(Educational Resources Information Center)は1966年に設立され、米教育省(DOE:Department of Education)の教育調査研究向上局(Office of Educational Research and Improvement)から補助を受け、全米教育図書館(National Library of Education)によって管理されている。ERICの中核は世界一を誇ると言われているERICデータベースで、教育に関わる膨大な情報をきめ細かくデータベース化し、必要な人々に提供している。
 ERICには、以下の16のクリアリング・ハウス(=情報センター)があり、それぞれが専門とする領域を持っている。
@ Adult, Career, and Vocational Education
A Assessment and Evaluation
B Community Colleges
C Counseling and Student Services
D Disabilities and Gifted Education
E Educational Management
F Elementary and Early Childhood Education
G Higher Education
H Information and Technology
I Language and Linguistics
J Reading, English, and Communication
K Rural Education and Small Schools
L Science, Mathematics, and Environmental Education
M Social Studies / Social Science Education
N Teaching and Teacher Education
O Urban Education

 今回訪問したシラキュース(Syracuse)のERIC Clearinghouse on   Information & Technology(ERIC/IT)は1976年に設立され、上記リストの9番目に示されているIT(Information & Technology)部門を担当している。具体的には図書館情報学(library and information science)と教育工学(educational technology)の分野を専門とし、教育の専門家、政策立案者、保護者、学生など教育に関心を持つ人々に情報を提供している。教育省からの信頼も厚く、クリアリング・ハウスは5年ごとに契約更新されるが、現在までに5回の更新を行っており、2001年には25周年を迎えている。
 ERIC/ITでは、既にある成果物を検索し、情報として役に立つものを選び出し、それを必要としている人に情報提供するのが主な仕事であるので、独自の研究は行っていない。したがって、例えば「子どもとインターネット」のような問題についての情報を得ることはできるが、専門家がいるわけではないので、このテーマについて独自の研究成果や独自の意見は持っていない。
 「子どもとインターネット」の問題はThe National Parents' Information   Networkが主に扱っており、このネットワークを管理しているのは上記16のクリアリング・ハウスのFElementary and Early Childhood Education(University of Illinois at Urbana-Champaign)とOUrban Education(Columbia University)であるが、中心となっているのは子どもの問題を専門的に扱っているイリノイ大学の方である。

5 ERIC/ITの情報提供活動内容
 ERIC/ITのサイトを開くと、左側に見出しがあり、例えば上から、図書館学、教育工学、ERICデータベース、出版物、ディスカッション・グループ、研究報告検索、授業案、プロジェクトなどがある。ネット上の情報提供を主な活動としており、これらがERIC/ITの主要な活動内容ということになるので、以下にこれらについて概観するが、ERIC/ITの活動の中でもAskERICは特徴的であり、中心的な活動とも言えるので少し詳しく述べることにする。
(1) 図書館情報学
 ここでは主に図書館情報学に関する以下の情報を得ることができる。
・ 関連学会情報
・ 主要雑誌情報
・ ウェブ・サイト情報を含む資料情報
・ ディスカッション・グループ(メーリング・リスト)情報
・ 会議情報

(2) 教育工学
 ここでは主に教育工学に関する以下の情報を得ることができる。
・ 関連学会情報
・ 主要雑誌情報
・ ウェブ・サイト情報を含む資料情報
・ ディスカッション・グループ(メーリング・リスト)情報
・ 会議情報

(3) ERICデータベース
 ERICデータベースは全てのクリアリング・ハウスからアクセスすることができる。このサイトをクリックすると、教育の研究及び実践に関わる100万以上のデータ(アブストラクト(要約)や論文)にアクセスすることができ、これらの情報は毎月更新される。
 例えば、internet safetyと入力してみると、関連する文書が全て出てくる。最初にアブストラクト(要約)が出てくるので、それを読んで更に詳しい情報を得たいと思えば、その全文を見ることができる。ここで得られたものをダウンロードして印刷するのは無料であるが、外部の出版物を手に入れる場合は有料となる。
 ここで気になるのは著作権の問題であるが、ERICデータベースの中にあるテキストは、著者が著作権をERICに譲っているので、著作権の問題は生じない。また、常時一般からウェブ上で資料提供を受け付けているのもユニークである。つまり、良い資料と判断されれば誰でもERIC Authorになることができるのである。
 Syracuseのクリアリング・ハウスは、情報学部(School of Information   Studies)と教育学部(School of Education)が大きく関わっているので、この領域に関わる1000件以上の資料と、2000件以上の雑誌論文を毎年ERICデータベースに提供している。

(4) 出版物
 ERIC/ITでは図書館情報学や教育工学に関連する出版物も出しており、ウェブ上で注文することができる。また、関連領域の主要テーマを扱った論文も毎年出している。
 以上の出版情報を得たいと思う人はITPUBS というメーリングリストに登録することができる。
 出版物については有料のものもあるが、オンライン上で無料で得られるものもある。例えば、添付資料の"Internet Resources for Children"は、ERIC/ITの情報スペシャリストである学校司書のBlythe Bennett氏が子ども向けのサイトを全て調べて、その中で適切であると判断したもののリストをウェブ上に載せたものである。

(5) ディスカッション・グループ(メーリング・リスト)
 具体的な教育問題について意見交換したいときに便利なサイトである。例えば「学校司書」のようなテーマで、メーリング・リストによるディスカッションに参加し、意見交換することができる。このようなメーリング・リストは1万件以上ある。

(6) 研究報告検索
 ERIC/ITでは、図書館情報学や教育工学に関する研究報告を常に検索し、その中で質の良いものをERICデータベースに加えるという活動をしている。
 情報収集については、年間当たりの情報収集件数がノルマとして設定されており、データベース・コーディネーターとそのアシスタントがそのノルマをこなすべく情報を集めている。具体的には、例えば大学の教授から情報を得たり、学会等の集まりに参加したりして情報提供を申し出て収集する。

(7) 授業案(Lesson Plans)
 図書館情報学や教育工学に関連する2000以上のユニークな授業案があるが、これらは現場の教員からAskERICに寄せられたものであり、これらを参考にすることで自分の授業に役立てることができる。
 また、自分にふさわしい授業案を探す上でヘルプが必要な場合はAskERICに直接アドバイスを求めることができる。

(8) プロジェクト
ア AskERIC
 1992年に立ち上げられたプロジェクトで、2002年で10年目になる。図書館情報学や教育工学に限らず、教育に関する全ての質問に答える画期的なシステムであり、アメリカだけでなく世界中からの質問がすべてここに集まって来る。図書館情報学や教育工学、あるいは教育一般に関する質問はシラキュースのクリアリング・ハウスで答えるが、もしここで処理できない専門的な質問が来た場合は他の関連するクリアリング・ハウスに振り分けるようにしている。
 例えば「子どもとインターネット」に関する質問が来た場合、インターネットに比重が高い質問はシラキュースの方で答えるが、子どもに比重が高い質問はおそらくイリノイ大学のクリアリング・ハウスに回すことになる。
 また、過去の質問は保管されており、それらをアーカイブで検索することができる。例えば、インターネット上で子どもを守るにはどうしたらよいか等の質問とその回答をアーカイブで検索した内容が"Internet Safety"(添付資料)にある。さらに、そのテーマに関連するディスカッショングループ(メーリング・リスト)がある場合は、その情報も紹介している。
 質問に対する回答を担当する者は5人で、シラキュース大学の職員であるが、スポンサーは教育省である。彼らはそれぞれの領域の専門家で、資格としては図書館学や教育学の修士号を持っている。
 1992年から今までに、約30万件の質問を処理してきた。週当たりにすると700から1000件の質問が届くが、回答は全て2日以内にメールで返している。
 このような状況の中で、回答の質をあるレベル以上に保つのは努力を要すると考えられるが、「アスクエリック・システムワイド・ガイド」(部外秘)というマニュアルがあり、それに基づいて一定のレベルを保つようにしているという。また、モニターしているコーディネイターがワシントンDCにいて、年に1度モニターするためにシラキュースを訪れるので、それによっても質を保つことができる。さらに、スタッフ同士で回答をチェックしあうことも行い、顧客満足度調査も行っているので体制は十分だと言える。
 しかし、基本的には優秀なスタッフを雇うことが肝心で、シラキュースのスタッフはその点で優れていると考えられる。

イ VRD (Virtual Reference Desk)
 バーチャル・レファレンス・デスクでは、ERIC利用者の質問に答えられる最もふさわしいレファレンス・デスクを探し出し、両者を引き合わせる役割を担っている。例えばAskERICは教育に関するネット上のレファレンス・デスクであると言えるが、芸術や科学など、他の専門領域のレファレンス・デスクが知りたいという場合には、希望のレファレンス・デスクを検索することができる。

ウ GEM(Gateway to Educational Materials)
 教育省(スポンサー)とシラキュース情報研究所(Information Institute of Syracuse)の共同事業で、授業案や教育プロジェクトなどについて、連邦、州、大学機関、非営利団体、商業サイトなどの、信頼性の高い教育情報を提供することを目的としている。
 例えば、「マルチメディア教育」というキーワードを入力すると、これに関連する信頼性の高い授業案情報を得ることができるし、あるいは"filter"と入力すると、推薦できるフィルタリング・ソフトのリストを得ることができる。このプロジェクトの特徴は、より確かで厳選された質の高い情報に早くアクセスするのを手助けすることである。

6 フィルタリングに対する見解
 情報提供することによって、それぞれが意見を構築できるよう手助けすることが目的なので、特にフィルタリングに対する意見はない。

7 組織基盤等
(1) 職員
 職員の数は27人で、全員が司書の資格を持っている。その内、6人がクリアリング・ハウスに、7名がAskERICに、6〜7人がGEMに関わっている。

(2) 予算
 すべて教育省の補助金でまかなわれており、年間予算はおよそ以下のとおりである。
・ ERIC/IT Clearinghouseへ約50万ドル
・ AskERICへ約50万ドル
・ GEMへ約80万ドル

8 コメント
  ERICは教育に関する世界的規模のデータベースなので利用価値は大変高いが、規模が大きいが故に、初めての人にとって、ERICの全体像をつかみながらの利用は難しい側面があるかもしれない。
 しかしながら、インターネット情報が玉石混交という状況の中で、良質で有用な教育情報を選び出して、教育に関わる人々に提供するというアイディアは大変素晴らしい。
 ERICの仕組み自体にも素晴らしいものを感じた。例えば、クリアリング・ハウスを決定する際には、教育省がクリアリング・ハウスを募集して、応募してきた機関の中からベストなものを選び、さらに契約期間を5年とし、更新していくという考えは大変合理的だと感じた。
 世界レベルの教育データベースはERICに任せるにしても、日本においても、日本国内版のERICがあってもいいのではないかと思った。アメリカのERICのように、16ものクリアリング・ハウスを維持管理することは大変だが、例えば「子どもの教育」というようなクリアリング・ハウスから始めるのもいい考えだと思う。
 今回シラキュースのERIC/ITを訪ねて特に関心を持ったのはAskERICである。アメリカのみならず、世界中から寄せられる教育に関する質問をメールで常時受け付け、2日以内で回答するというAskERICプロジェクトには脱帽である。
 また、AskERICは教育に限定されるが、アメリカには同様のシステムが多数存在しているので、それらの情報を総合的に管理し、必要としている人に紹介するVRC(バーチャル・レファレンス・カウンター)の考えにも共感を覚えた。
 以上のようなERICシステムは利用価値が大変高く望ましいものであるが、同時に情報格差の問題も私の意識に上った。利用可能なコンピュータが身近に存在し、それを使いこなす技能がある人と、そうでない人の情報格差はますます広がることが危惧される。多くの人がERICのような便利なものを利用できるようにするための普及活動も重要だと感じた。

 ERIC は、様々な教育関連の情報を提供している機関で、独自の立場や見解を持っているわけではないということであった。政府の補助金により運営されていることが、このようなシステムとなっていることに影響を及ぼしているのであろうか。あるいは逆に、このようなシステムであるからこそ政府の補助金により維持されているのであろうか。いずれにしても、特定の立場に立たずに専ら情報提供を行う機関があるということは、利用者にとっては有用なことであると思われる。一方で、情報提供が主たる活動である以上、その提供する内容が偏向的なものではあってはならないし、また、当該情報の収集過程の透明性なども要求されるであろう。説明ではコーディネイターとアシスタントが情報収集に当たり、また、提供する情報の質を保つためのチェックも行われているとのことである。とはいえ、収集するにしても、提供に値するか否かの判断をするにしても、最終的にはスタッフの質にかかっていると思われる。どれだけ優秀なスタッフ体制を整備・維持できるかがポイントであろう。

9 参照資料等
・ ERIC/ITウェブ・サイト(http://www.ericit.org)
      Eメール (eric@ericir.syr.edu)
・ AskERIC ウェブ・サイト(http://www.askeric.org)
      Eメール (askeric@askeric.org)
・ GEM ウェブサイト (http://www.thegateway.org)
・ "Internet Resources for Children," Blythe Bennett.
・ "Internet Safety", An AskERIC Response, August 2000.



≪ホームに戻る