米国調査報告          
※ここに掲載した報告書はまだ未完成のものであり、実態とは違うものになっている場合もあります。転載等はご遠慮ください。尚、コメントは当事務局へいただけますよう、よろしくお願いいたします。

■Net−Mom  (http://netmom.com/
1 住所等
       4146, Barker Hill Road,
       Jamesville, NY. 13078, USA.
       Tel : 315-469-8670 Fax: 315-469-0176
       E-mail: mom@netmom.com
       URL: http://www.netmom.com/

2 調査日時
平成14年8月6日(火)10:00〜11:00

3 対応者
  Jean Armour Polly氏(Net-Mom代表)
  Mr. Larry M. Polly (Net-Mom ウェブデザイナー)
  Mr. Stephen J. Polly, Ms. Marylee M. Armour (Net-Momサポーター)
  
4 概要
(1)  設立の経緯、目的等〜Jean A. Polly氏の経歴と活動
 1974年、シラキュース大学卒(中世研究)。1975年、同大学大学院修士課程修了(図書館学)。16年間、公立図書館(Liverpool Public Library, NY州)の司書を務めた後、3年間(92~95年)、インターネット・サービス・プロバイダに勤務する。公立図書館司書時代には、Electronic BBS (1985-87)、Public Computer Lab (1981-現在)、Circulating Software Collection (1984-現在)など、インターネットで数々の先進的な試みを行なっている。
 94年頃から出始めた「インターネットは子どものためにならない」という議論をきっかけに、子どものためになるサイトを紹介する本の必要性を痛感した。「多様性のあるインターネットに子どもがアクセスできないなら、私も子どもにアクセスできない」と考えたからである。その後、出版社と契約を交わし、仕事を辞め、本格的に執筆に取り組んだ。92年、「インターネットをサーフィングする(surfing the Internet)」という表現を雑誌で初めて使用し、「インターネット・サーフィン(Internet surfing)」という言葉の生みの親としても知られるようになった(著書にSurfing the Internet, 1992がある)。インターネットに関する疑問や問題の問い合わせが次第に多くなり、いつしか「インターネット・マム(Internet Mom)」と呼ばれようになった。じきに、「ネット・マム(Net-mom)」と略して呼ばれるようになり、親としての問題意識や図書館司書としての視点を生かした同名のホームページを個人で開設するに至った。
 同ホームページでは、子どもとインターネットに関するさまざまな情報提供を行なっているが、活動を「インターネットと子どもの安全」に特化しているのは、「情報とそれを求める人をコネクトする」という司書の経験によるところが大きい。「すべての子どもがインターネット上のプレデターに狙われるわけではないが、インターネットには、正確な情報や古い情報が氾濫している。これらの情報を、子どもがすべて信じてしまうことは非常に危険である。ネット・マム(インターネットのお母さん)として、子どもたちの安全を守ること、それが私の使命である。」と彼女は語っている。

(2) 活動内容
 Net-Momは、代表者のJean Armour Polly氏が、家族のサポートを得ながら個人で運営しているサイトである。その活動内容は、代表者自らがオフラインで行なっている活動と、その成果に基づくあるいはその活動をサポートするオンラインでの活動との2つに分けられる。
ア オフライン活動
@ ライター/コラムニスト
 家族向けインターネット情報誌として全米1位の人気を誇るNet-Mom's Internet Kids & Family Yellow Pages (Osborne/McGraw-Hill, 1996-2002)を6年間にわたり執筆している。1992年には、Surfing the Internetを執筆し、「インターネット・サーフィン」という言葉を世に送り出した。この他、Becoming Family(雑誌)のコラム、Ask Jeeves for Kids(ウェブサイト)の週刊コラムを担当しており、Net-Momのホームページでも、無料のE-ニューズレター(週刊)を発行している。

A コンサルタント/スポークスパーソン
 これまで個人で150万サイトを検証している。子どもサイトに詳しいことで、America Online, The Bertelsmann Foundation, Children's Television Workshop, Disney Online, MCI Foundation, The Morino Institute, TCIといったメディア企業のコンサルタントを歴任している。また、子ども向け検索サイトのAsk Jeeves for KidsやフィルタリングサイトのGuardia Net, Ameritech.netのTV/ラジオ・スポークスパーソン、National Boys and Girls Club of Americaのテクニカル・アドバイザーも務めている。オンライン・セイフティのCD-ROM教材「クルーズ・コントロール(Cruise Control:Ameritech.net, the Urban League, TechCorps, The National Center for Missing and Exploited Children共同製作)」では、案内役兼ナレーションも務めている。

B 市民活動家
 1993年、「インターネット協会(Internet Society)」理事に、女性で初めて選出される(女性他1名)。ICRA(Internet Content Rating Association)の理事として、ドイツのベーテルズマン(Bertelsmann Foundation)と協力し、ドイツにおけるインターネット・セイフティも推進している。その他、ThinkQuest(Advance Network and Services主催)の最終審査員や「ケーブル&ワイアレス・チャイルドネット」賞の司会者(2001)も務めている。
 一方、図書館関連では、長きにわたって、ALA(American Library Association:米国図書館協会)の会員で、図書館情報技術協会の前理事長や自ら創設した公立図書館司書らによる米国最大のインターネット・ディスカッショングループ「PUBLIB」の名誉モデレーターも務めている。

イ オンライン活動
@ 100 Hot Sites for Families
 自著 Net-mom's Internet Kids & Family Yellow Pages2002の中から、特にお薦めの100サイトをピックアップし、その内容をウェブ上で公開している。さまざまな子どもの個性やニーズに合うよう、11のカテゴリーに(美術/工作、家族の遊び、ゲーム/オンラインゲーム、宿題、算数/数学、音楽、未就学児、読書/作文/お喋り/ペンパル、科学、スポーツ/外遊び、ステファン(ネット・マムの息子)ご推薦サイト)に大別し、その中から優れた内容のものを推奨している。

A Internet Answering Machine
 インターネットの利用方法や技術的なトラブル、家庭での問題など、「子どもとインターネット」に関するあらゆる質問に答えてくれるQ&Aサービス。「21世紀の家族にとってインターネットは必要か」「サイトの選び方」「インターネットで最も危険な落とし穴」「インターネットの危険から身を守るには」など10種類(Press1~0)の大きなテーマがあらかじめ用意されており、関連サイトや家庭へのアドバイスなど、さまざまな情報を提供している。その他の個人的な質問に対しても、代表者自らがその都度きめ細かな対応をとっている。

B Net-mom's Nice Sites Awards
 家族向けサイトとして優れたサイトに授与される賞。科学、芸術、自然、音楽、歴史など16分野に分れており、昨年度(2001年度)は、29のサイトが選ばれている。各サイトの特徴や利用方法、ネット・マムのコメントなどが紹介されており、優れたホワイト・リストとして利用者も多い。

C その他
 そのほか、オンライン・ニューズレター(週刊)の
発行や「インターネットと子ども」に関する新刊の紹
介、世界各国の情報をコンパクトにまとめたWorld
According to Net-momなどのコーナーの他、優れた
サイトにNet-mom推薦の証となるオリジナル・ロゴ
マーク(パイにnet-mom approved)を授与する活動
も行なっている。

(3) フィルタリングに対する見解
 現在、フィルタリング会社(GUARDIANET Systems:本社ノースカロライナ州グリーンズボロ:http://www.guardianet.com)と共同で、保護者が指定したサイト情報を記憶させる図書カード(Library GUARDIAN Access Smart Card)の開発を行なっている。このカードによって、パソコン利用の予約のみならず、個人のお気に入りサイトやクッキーの記憶や共有サーバのストリッジスペース確保、時間・スケジュール管理、アクセス・印刷・コスト管理もでき、司書が警官の役割をしなくても済むようになる。
 また、子ども宛ての電子メールをフィルタリングする技術を開発している企業とも仕事をしている。米国では、ほとんどすべての子どもが電子メールアドレスを欲しがり、それに対して保護者はなかなか「ノー」と言えない。この技術は、保護者が指定した電子メールアドレスからのメール受信だけを可能にするので、好ましくないジャンクメールを排除できる。また、添付ファイルの受信もフィルターできる。
 一方、アメリカ・オンラインが提供しているフィルタリング・ソフトについては、保護者に知識がないことが大きな問題と言えよう。同CD-ROMは、本屋や郵便局などあらゆる所で入手できるが、それを手に入れてもアップグレードしない場合が多いようである。新しいバージョンでは、子どものアカウントを設定する際の注意事項などが丁寧に説明されているようだが、それでも理解できない親が大勢いる。これらの無料フィルタリング・ソフトは、普通の家庭にとって、ひとつの良い選択肢となっているのは事実だが、十分活かされているとは言えないのが現状である。

(4) ホワイトリスト作成の意義
〜Net-Mom's Internet Kids & Family Yellow Pages〜
 本の選択のベースとなる方針を持つ「司書」としての経験をもとに、サイバースペースの図書館をつくるつもりで、200の主題(約3500サイト)を選択した。サイトを選ぶ基準は、「リンクがつながる」など正しく機能するサイトでなければならないのはもちろんだが、大手出版社とつながっているなど出典が確かで、常に更新されており、12〜14歳以下の子どもを対象とした内容を提供しているなどが主な条件とされている。また、アクセスする国や地域によってインターネットへのアクセス・スピードも異なるので、グラフィックとテキストがバランスよく配置され、学ぶ内容のあるサイトを選ぶようにしているとのことである。
 さらには、ポルノやカジノなど成人向けのコンテンツや成人向けのサイトに直接リンクしていないかどうかも重要なチェックポイントとされている。日本の人気アニメサイト「ハムタロー」の場合は、数年間にわたって掲載されていたが、好ましくない成人向けのアニメサイトにリンクされるようになったため、即リストから外されている。
 6年間改訂版が出版されているが、年々若い世代を対象としたサイトが増えているということである。
 「個人的には保守的だと思わないが、子ども向けサイトの選択に関しては、非常に保守的な立場をとっている。米国の『ネット・マム』として、私の活動を見守る人も、私が注意深くサイトを選択することを望んでいる。」と彼女は語っている。

(5) 組織基盤等
 市民活動団体としての法人登録はしておらず、事務所も持たない。家族のサポートを受けながら個人で運営しているサイトなので、一般の個人ホームページとまったく同じ形で、情報提供を行なっている。コンテンツは主に代表者が作成し、ウェブデザインは夫のLarry氏(NY州アップステイト医科大学ウェブ開発マネジャー)が、キャラクターデザインやマーケティングは息子のStepen君(NY州私立マンリウス・ペブル・ヒル・スクール10年生)がボランティアで担当している。ホームページにおける情報提供を主とした活動を行なっているため、実質的な運営資金は電話代のみ。特定の企業や財団による助成等も受けていないため、自前の出版事業やキャンペーン等は一切行なっていない。
 2001年4月10日からは、Net Nanny, Inc.とコンテンツ・ライセンス契約を結んでいる。

(6) 今後の課題・展望
ア 新たなポータルサイトの設置
 米国の保護者が今最も心配していることは、「インターネットで子どもをどう守るか」という子どもの安全の問題である。まだ準備段階ではあるが、アン・コリヤー氏やナイジェル・ウィリアム氏、ラリー・マギット氏らと共同で、子どもに安全なサイト情報や安全なパソコンの使い方などに関する情報を提供する保護者のためのポータルサイトを立ち上げようとしている。

イ プレデター(predator:性的搾取者)問題
 米国の保護者の間では、電子メールやチャットルームに対する警戒心が強い。最近では、子どもが簡単に自分の日記をネット上に掲載できる新しいホームページ作成ソフト「ウェブ・ログ(Web Log)」が問題になっている。テストとして、Jean氏自身が両親とうまくいっていない十代の少女のふりをして日記をアップロードしたところ、5~10分ほどで同情するような口ぶりの人間からリスポンスが届き始めたとのことである。このようにすぐ連絡をとってくる者の中には、プレデターが紛れ込んでいる可能性があり、子どもにとって非常に危険である。

ウ 図書館司書 vs. ネット・マム
 2001年9月11日の米同時多発テロ以降、ドットコム・バブルがはじけ景気が低迷したため、コンサルタントとして多くの顧客を失った。そのため、現在では、システム技術管理者として、9年前に勤めていたリバプール公立図書館(NY)に復職している。しかし、図書館の方針に全面的に賛成できない点があるため、図書館での業務とネット・マムの業務は基本的に分けている。

エ 「ネット・マム」の国際的普及
 「米国のネット・マム」としてのこれまでの経験を通して言えることは、米国以外の国でも私と同じような「ネット・マム」が生まれてほしい、と彼女は語る。「インターネットと子どもの安全」に関するさまざまな情報提供や提言をする人が世界中に増えることで、子どもたちは安心してインターネットにアクセスできるようになるからである。

5 コメント
 今回の視察は、Net-momのPollyさん一家の協力なくしては成功し得なかったと言っても過言ではない。スケジュール調整の段階からさまざまなご助言・ご提案を頂き、シラキュース滞在中にいたっては、一家総出で運転手兼案内役を務めて下さった。この場を借りて、心から御礼を申し上げたい。
 米国のNet-momとして知られるJean氏は、インターネットという広大な海原で子どもたちが安全に航海できるよう、つねに光を放ち続ける灯台のような役割を果たしている。膨大な数のウェブサイトを検証・分析・分類するホワイトリストの作成には、図書館司書としての長年の経験と実績が生かされているのは周知の事実だが、子どもの安全を守ろうとする強い意志と子どもに対する深い愛情がなければ、これだけ大変な作業は到底成し得ないだろう。
 彼女が作成したホワイトリストを見ると、彼女の「子ども観」や「教育観」がよくわかる。インターネット時代の子どもの日常生活に焦点を合わせ、家庭における親子のコミュニケーションに重点をおいた紹介の仕方は、他団体のメッセージと異なり、多くの親の共感を得ているようだ。「こうしなさい、ああしなさい」というTipsを掲げる代わりに、「こういうのはどう、ああいうのはどう」という選択肢をできるだけ多く提案すること、それが彼女のホワイトリストの人気の秘密だと思う。
 また、一家総出(夫、息子、実母)という家内工業的運営ならではの温かみのある情報提供が、大きな成果につながっているとも言えよう。Polly一家の家族愛がじかに伝わってくるようなコンテンツやメッセージを通じ、多くの親子は、「インターネットと子どもの安全」だけでなく、家族の大切さについても学ぶことができる。フィルタリング会社のスポークスマンとしてフィルタリングの重要性について説く一方、親の関わりを強調する彼女の姿勢からは、「インターネットの危険から子どもを守れるのは親の愛情しかない」というメッセージが伝わってくる。
 さらに、図書館司書として長年培ってきたJean氏の科学的・客観的視点と豊富な経験が、Net-momの活動を大きく支えている。親から寄せられるさまざまな質問に対する回答の多くは、情報の案内役たる図書館司書としての豊富な実務経験に裏づけされている。また、メディアのコンサルタントや業界団体の理事を務めることで、家庭のナマの声を送り手側に伝えるメッセンジャー的役割も果たしており、一般家庭の代弁者として企業の製品開発や政府の政策決定にも大きな影響力をもっている。
 一個人でこれだけ影響力をもつ活動が展開できるのも、インターネットの世界ならではのことだと思う。しかし、インターネットというとてつもないメディアを相手に、私たちができることを考えていくうえで、非常に示唆的な取り組みとも言えよう。

 Jean氏は、家族のサポートを受けているとはいえ、個人で行っているとは思えないほど幅広く活動し、かつ、それらの活動が多くの支持を得ている。特に、150万にのぼるサイトを検証して選別(格付け)し、推奨サイトに関する情報を提供するとともに、インターネットの利用方法や技術的トラブルなど、寄せられるあらゆる質問に対応できるのは、司書としてのリサーチ・スキルの高さと技術者としての専門的知識に支えられているからであると思われる。
 また、今回の調査で訪問した団体のうちのいくつかに対するインタビューの中でも、彼女の名前がしばしば出てきたが、Net-momの活動自体は個人的なものであるとしても、実際には様々な団体や個人とのつながりの中で、これらの活動が展開されているとも感じた。
 自前のキャンペーン等は一切行っていないにもかかわらず、多くの支持を得ていることからすれば、あえて普及・啓発活動を行う必要はないのかもしれない。しかし、「インターネット上の子どもの安全」の確保をより一層推進しようとするのであれば、すべての保護者等に対する普及・啓発は不可能であるとしても、できるだけ多くの保護者等に情報(少なくとも、Net-momというサイトが存在すること)を提供することが重要であると考えられる。そのためにも、様々なキャンペーン活動(例えば、今回の調査でインタビューしたDonna Rice Hughes氏等が検討中の全国的なキャンペーンに参加するなど)も必要なのではないか。
 なお、Jean氏は、司書の資格を持っていて、ALAの会員であると同時に、現在は、リバプール公立図書館に勤務している。しかし、図書館の方針に全面的には賛成できないため、図書館での業務とNet-momの業務は基本的に分けているとのことである。その賛成できない点の主たるものは、フィルタリングに対する考え方である。彼女は、ICRAの理事でもあることからも分かるように、家庭に対するフィルタリングの普及を推進している。一方、すべての人の情報へのアクセスを保障することが図書館や司書の役割であり、この観点から図書館は、有用な情報までも遮断してしまうとの理由からフィルタリングには反対の立場を取っている。Jean氏が、フィルタリングに関し、考え方の異なる組織に所属するという「二足のわらじ」を履きながら活動をしているというのは、興味深い点であった。

6 参照資料等
・ Net-Momウェブサイト (http://www.netmom.com/)
・ Polly, Jean Armour, 2002, Net-mom's Internet Kids & Family Yellow Pages   2002 Edition (6th. Ed.), New York: Osborne/McGraw-Hill.
・ GUARDIANET Systems (handout holder & card)


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